胡桃沢耕史、岩崎定夢、瀬戸弘幸、と連なる三者の系譜。バブル経済前夜、その導入部とその記憶

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脈々と受け継がれる胡桃沢耕史イズム
『フリーWRITER』(1980年7月 - 1983年3月、けいせい出版)とは、直木賞作家・胡桃沢耕史の弟子筋であり、胡桃沢の代表作である(累計1000万部、郷ひろみ主演でドラマ化もされた)『翔んでる警視』シリーズのモデルとなったジャーナリスト・岩崎定夢(いわさきさだむ)が編集兼発行人となって刊行された総合月刊誌であります。そして今回、そのweb版始動にあたっては、岩崎を師と仰ぎ且つ、胡桃沢本人から本名の後継を託され、「清水正二郎」名義で幾多のアダルト雑誌に著述を残し、加え後に本誌『フリーWRITER』編集長に就任することになる政治活動家兼ジャーナリスト・瀬戸弘幸が、数々の記事の著作権問題等を解決しつつ、記事の保全に奔走しました。

多士済々な作家陣
本誌web版では、当時の記事群から色褪せることない秀逸な記事を厳選し、ブログでの無料掲載、またはデジタル書籍としての有料記事として、みなさまにお届けする予定です。主な採録される作家陣は、保守系評論家・山本七平、元麻薬取締官・小林潔、ジャーナリスト・小田桐誠、映画監督・山本晋也、作家・野坂昭如など多士済々。他にも注目記事には、「戦艦大和」建造の最高責任者・庭田尚三(元海軍技術中将)の生前最期の貴重な証言手記も含まれます。

プラットフォーマー
『フリーWRITER【web版】』はテキスト発信に留まらず、動画配信、イベント、映画製作も視野に入れた、保守、革新を横断した言論、思想、エンタテインメントのプラットフォーム化を目指します。先ず題材となるのは、増刊号にて全文掲載のうえ鑑定論文募集という形で問われた「小説『愛の処刑』は三島由紀夫の作品か?!」という問いへの結実です。結論から言えば1980年、『フリーWRITER』増刊号の野心的な問いは、25年後の2005年に三島由紀夫の直筆原稿の発見によって紛れもない三島作品であることが確定し、同年暮れ、新潮社・三島由紀夫全集に補巻という形で収録されました。

以上、三つのテーマと有機的に絡み合う運命的な事象はさらなる発見と出会いを生み、小説『愛の処刑』をめぐって再び、激動の昭和を生き抜いてきた男たちは令和で邂逅を果たしました。

次項では、この男たちの邂逅。小説『愛の処刑』の実質的管理者であった伊藤文學と、『フリーWRITER』二代目編集長・瀬戸弘幸の偶機の対談を通し、またや時を越えて聳え立つ胡桃沢耕史=「清水正二郎」の圧倒的な存在感とその伝説の数々をご堪能いただきたく存じます。
(敬称略)

text: 亜蘭寿美史(フリーWRITER【web版】管理人)